人気ブログランキング | 話題のタグを見る

   こんにちは!          今日もいい塩梅ですか?


by minmei

10月19日 早朝予約での出来事

10月19日 土曜日

今日は早朝予約でお客様のお宅へ出張で
セットとメイクをさせていただく為に伺った。
お客様はわたしらが独立してから
ずっと来ていただいている常連のお客様。
開店当時始めていらした時のことは今でも忘れない。
坊主頭に青い体操着を着た小学生の男の子が
「車椅子でも大丈夫ですか?」と言って
電動式車椅子のお母さんに付き添ってやって来た。
お母さんは首から下がほぼ麻痺して動かず
でもかろうじてなんとか腕が少しばかり動かせて
右の肘掛のところに付いているコントローラーを
右手にマジックバンドで消しゴムつきの鉛筆を逆さにして固定させ
それで腕ごと動かしてなんとか自分でボタンを押したりレバーを動かしたりして
操作しながら入ってこられた。
そしてわたしらは当然快く受け入れた。
最初はシャンプー台でシャンプーをするときに
電動式車椅子を倒してうまい具合にシャンプー台に
はめ込む操作にあたふたもしたが
今じゃ慣れたもんだ。
それから必ず2ヶ月に一度はカラーとカットで来店される
我が店の大切な常連のお客様となった。
そしてやはり、何度か接していくうちに
どうしてこういう状況になったかは
自然と知ることになっていったのだ。

お客様にはご主人と3人のお子さんがいた。
その家族の乗った車が事故にあい
お母さん(お客様)だけが重症を負ったのだという。
初めて来店されたときのあの坊ちゃんは
一番末っ子で幼稚園の時の話だそうだ。
お客様は気さくに躊躇も無く淡々と話してくださった。
どこか吹っ切れたような感じさへ受けたが
でも多分ここに至るまでにいろいろな事があっただろう。
それはわたしの想像を超えるほどの苦労が。
しかしそれ以上は踏み入らない。
事故の話はその1回だけで、あとは他愛のない世間話や
映画が好きなので映画の話をして楽しい会話をしている。
一髪を切るただの美容師とお客様という関係として。

そしてそのお子さんたち3人のうちの
一番上のお姉ちゃん以外の弟二人のどちらかが
それが役割のようにいつもお母さんに付き添ってやってくる。
一番下の弟に限っては、帰りの際後姿を見送りしていると
お母さんの電動車椅子にうな垂れるようにして
何か甘えている様子を見た。
そうか、ああいう甘え方があるんだなぁ。良かった。と
安心してみたりして。
お母さんは子供に手をかけてやることはできないけれど
精神面では十分に子供たちを支えている。
多分仕事にかまけておろそかなわたしよりも
十分に温かな愛情をそそいでいることだろう。
で、殆ど会ったことの無いお姉ちゃんだが、
たまたま早朝銀次郎君の散歩で
お客様のご自宅の横を通ったときに始めてお見掛けした。
お姉ちゃんはベランダで洗濯物を干していた。
そこで悟った。この子は家の家事を殆どしているのだろう。
若いのに、朝家族のご飯を作り洗濯をすませ
自分のお洒落はそこそこに、仕事に出かけている。

そんなお姉ちゃんがこの度ご結婚される。とのこと。
それでお母様の身支度をわたしが任せられたのである。
その朝のご自宅での光景は、それぞれがてんやわんやと
てんてこ舞いをしていて、お姉ちゃんと弟が
ちょっとした言い争いなどもしていたが、それは多分日常のことで
今日に限っては、家族として最後の兄弟げんかを楽しみながら
やっている感じが見て取れた。
横でメイクをされながらお母さんは、そこにわたしが居た手前か
「あの子はあんなで、ほんとに嫁がつとまるんだろうか。」
と、まぁ、お決まりって言えばお決まりの台詞を言った。
いつもよりカールを聞かせてブローセット。
何年かぶりのメイクを施し、真珠のネックレスにイヤリング。
胸に淡いピンクの花のコサージュ。
お客様は見違えるように美しくなった。
そこへご主人が近づいてきた。
メガネを磨きながら、

「お、美しくなったねぇ。今日は多分お母さんもメインだからねぇ。」

と言って、綺麗に磨かれたメガネをかけてあげていた。










今日はとても感慨深い仕事をさせてもらった。

それにしても、皆、幸せそうだった。
by minmei316 | 2013-10-23 14:11 | 仕事